今回で「幼稚園終了までに育って欲しい10の姿」最後になります。
できるだけ易しく、幼稚園教育を学んでいない方でも理解できるように、との思いで実例や例えを多く入れながら、日本の幼児教育が目指している所。小学校以上の教育と違う所などを解説させていただきました。今日で10の姿が終わります。ご愛読を感謝すると同時に、幼児教育が目指しているもの、旭幼稚園がどんな工夫をして、この10の姿を具体化しようとしているか。こんな点を少しでもわかったいただけれたら幸いです。

 豊かな感性と表現ですが、幼稚園教育要領によれば「心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気づき、感じたことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜びを味わい、意欲をもつようになる」と書かれています。実は不肖私は、大泉保育福祉専門学校で「表現」という項目を担当させていただいております。この授業で最初に学生さんにお話しするのは「表現」と「表出」は違う、という事です。驚いて大声を出したのは「表出」。表現とは「見ている人がいる」という前提で構成されます。

自分の気持ちを、どうすれば相手に届ける事ができるか。つまり感情のキャッチボールがあることを前提としている。これだから「表現」なのだ、という事を説明します。

 

次に表現するためには、何かを感じ取る「感性」が必要であり、感じ取るには、「心を動かされる体験」が欠かせない。そのためにも、環境を整える事が大切になる、という事です。ごっこ遊びにしても、わが園では砂場の道具の中に本物の回転寿司のお皿(ネットオークションにて落札)や本物の「しゃもじ」が、さりげなく入っています。これ、けっこう人気です。本当のお寿司屋さんに入った「つもり」で「まぐろ、下さい」と言うと砂で作ったお寿司が並びます。こんな活動が日常行われているから、劇なり発表なりに発展するのだと思います。

「表現する」にしても何もない状態で「さあ、表現しましょう」は難しい。何かやった経験があって、それを自分なりに工夫や修正しながら「表現」するのが一番やりやすいと思います。その意味で、園内で行っている「ごっこ遊び」は大切な活動といえます。役になり切るために、衣装が必要となると、身近な素材で作って見たり、椅子や机をお城に見立てたり、想像力を駆使していきます。これを認める。子ども達が一生懸命取り組んでいる時は、下手に手出しをしないで見守る事も重要です。もし、活動が停滞したり、子どもの力ではできない部分が出現した時に、必要な分だけ手伝うのが、本当の「援助」だと思っています。要は「この日の活動」が「次の日の活動」につながり、発展する事で豊かな表現活動になれば良いと思っています。

 いかがでしたか?幼稚園とは「遊び」を中心とした総合的な活動。園に入った瞬間から園を出るまでの経験全てが学び。その学びを生かすかどうかは、担任の行う準備、環境構成がキモになる。だから感性豊かで子どもが何を感じ、何をやりたがっているか。これを察知する能力にたけた先生方が必要になります。
 幸いにも私ども、旭幼稚園は優れた感性を持つ先生方に囲まれています。この「人材」が旭幼稚園の保育を支えてくれています。

 さあ、今日の保育も充実したものとなるよう、頑張って保育していきたいと思います。