最近、保育業界が激震にみまわれています。通園バスに園児を閉じ込めた(バスに園児が乗っているのを見落として施錠した)事件が続発したのをきっかけに、暴力行為で3人の保育士が逮捕される、という事件まで起きました。本当に困ったものです。

  バスの閉じ込め事故は、幼稚園なら普通に行うべきことを、普通にやっていたら見逃すはずがない事故です。最初、この報道を聞いた時「?」でした。「何で?」「どうしたら見逃すの?」というのが感想です。通園バスですから、運転手は運転に集中しています。乗っている園児さんの様子を見て、危険な行為をしていたら注意し、事故を防止するためにも、先生が必ず1人以上乗っていないと危険です。これも当然やらなければならないこと。
そして、バス運行終了後、必ず全座席の見回りをしなかった事が驚きです。一番後ろの座席まで確認し、落とし物・忘れ物はないか。お漏らし・嘔吐など、異常はないか見回り、異常がない事を確認し、掃除が終わって、はじめて「バスの運行が終了しました」となるはずです。それをやらない事が不思議です。
  今はコロナ対策もあり、全部の座席・窓等々、園児さんが手を触れたであろう部分、全て消毒していますから、複数のスタッフで何度も確認している訳です。それで見落としはありえない。一体何をやっていたんだ、というのが私の感想です。

  このニュースがネットで流れると、保育の事に関して何も知らない方々から「センサー取付を義務化すべきだ」「マニュアルをきちんと作るべきだ」等々のご意見が載っていました。
  センサーを付けたにせよ、「警報ブザーを止めるために、一番後ろまで行って停止スイッチを押す」のと、「異常がないか、落し物はないかを確認するために一番後ろまで行く」。同じ「一番後ろまで行く」事は同じでも、考え方・注意力・配慮。そして「子どもに対する愛情」があるかないか。その点で全く違うと思うのです。マニュアルを作って「私どもの園では、これだけ完璧なマニュアルを作って対応しています!」って言うのも何かちがうような気もします。かく言う私も、急遽マニュアルを見直し、今まで口伝えで継承していた安全確認事項をマニュアルに追加しましたので、人の事は言えないのですが…。

  次に暴力行為。ニュースの報道によれば、日常化していたとか。ちょっとどうなのでしょう。やって良い・悪い以前の問題になるのでは?と思います。
  「しつけ・教育」という問題と体罰と言う問題。紙一重です。私も「叱る」と「怒る」は違う。私たちは怒ってはいけない。叱る事しかできない、という事を職員会議で再通達しました。でも、人格形成・行動様式の確立には幼少期の体験が重要と言われています。その方が、幼少期、そう言う体罰を日常的に受けていたとしたら、「言う事を聞かない場合は暴力も仕方ない」と思ってしまうかも知れません。私の高校時代の数学の先生、非常に厳しい方で「口で言ってわからない場合は、体で覚えてもらう」と公言し、いつも壊れた竹刀の竹を黒板を指す棒代わりに持ち歩き、授業態度が悪い、簡単な問題が答えられないと平気で竹刀で殴るような方がいました。あの当時だから多めに見られていたのかも知れませんが、今思ってもちょっといかがなものか?と思っています。(そのせいで、元々苦手の数学、全くできなくなりました)

  こんな古い話はさておき、現代の保育では「威圧的な指導」は体罰と同じ、という考えです。このニュースを読まれた方々の書き込みを見ていたら、「こう言う事が起きない様、監視カメラを付けるべき」「親が保育の様子をスマホから見られるようにすべき」という意見。そして「私の子どもは同じクラスの子供にいつも叩かれたりしています。その子にもきちんと指導してもらえなくなるのでは、と心配です」という意見まで、様々なものがありました。ただ、ひとつ言えるのは「現在のコンプライアンスに従った場合、いかに保育をするべきか」という事。園内できちんと意見を統一しておく事は必要だろう、と思います。
  私も月例職員会議で「今の時代に合わせた保育をすること。大声で怒鳴る事。頭ごなしに叱責すること。手や腕を引っ張る事。これらは暴力行為と見られるので注意する事。ましてや手を上げる事は絶対に許されない。本人にその気がなくても、そう見られた場合は暴力行為を行っていた事になるので注意すること」と言う事を再確認しました。私どもの園では、防犯カメラで園内外の様子を録画しています。何かあったら、見直す事もできますが、これを公開したり、外部から見られるようにする事に関しては、先生方のプライバシーの問題もあるので考えてしまいます。

本当に難しい時代になりました。