わが国では少子高齢化に歯止めがかかりません。出生率もどんどん低下しています。人口を維持するには、出生率2,01が必要なのに、それを大きく下回っています。ついに日本の総人口が減る、という状況になりました。
  一時期、待機児童が急増した折、「保育園落ちた、日本死ね」という投稿があり、社会問題にもなりました。昔は女性の就労率、25歳から35歳位の間が極端に落ち込む「M字型曲線」になっていた。これを諸外国並みに台形曲線にしよう、という国策もありました。ただ、日本の政策と言うもの、掛け声だけは威勢がいいのですが、それの基となる制度改革とか、予算とか。非常にプアーなまま数値だけ(結果だけ)を求める傾向にあります。だから、進めたくても企業とすると躊躇する。数字があがらないと、結果だけ出るような愚策が続きます。一段高い位置から、制度全体を見回す人がいあにのです。だから各部署で思いついた・できそうな政策を出してきますけど、「こっちの部署の言う事」と「あっちの係の言う事」が違うなんて事も多々あります。これが現実です。結果だけ・数字だけを求められると、某中古車店のように、無理やり傷をつけて、修理代を高く請求する等々、何か特別な手を使わないといけなくなります。子育て支援に、このような悪手を使う訳にはいきませんが、「どうすればいいのよ?もっと具体的に考えた上で制度を作ってよ!」と思う事が多いのが現実です。

 こんな時代だけに、幼稚園・保育園としても重大な課題として「園児数の確保」という問題が出てきます。メールやファックスでは、毎日「これで園児が増える」「他園との差別化」という、いかにも「これをやったら園児が増えるかも?」と思わせるような研修会案内、様々な製品案内が届きます。だけど、ちょっと考えてしまいます。
 
 今日のメールに研修会案内がありました。他園との差別化で園児数アップ!というものです。首都圏にいくつもの園を経営されている理事長さんが講師です。多角化のノウハウ伝授、というものですが、園数が多い。園児数が多いって、えらいのですか?保育って「数」で判断するんですか?内容はどうなっているんですか?そんなに多くの園を経営されていて、全部の園に毎日顔を出せるんですか?どうやって自分の方針をスタッフに伝えられるんですか?こんな疑問が出てきます。

「手ぶら登園で保護者負担軽減!他園との差別化に!」というものもありました。つまり、おむつを持っていかなくても、メーカーからおむつが届く。それを使えば、保護者負担が減る。ひいては園児獲得につながる、というものです。でも…。おむつは持っていく必要がなくても、持ち帰る必要はある訳です。それに価格。保護者の方は、園で使うおむつ代を負担しないといけません。これが少々高い。銘柄が1種類(サイズは年齢に合わせ、何種類かあるようです)。この問題が出てきます。使ってみて、この銘柄が柔らかくていい。こっちのメーカーの方が吸水率がいい。使い捨てになるものだから、安価なほうがいい。保護者の皆さんのお考えも様々だと思います。

 もう1点。使用済みのおむつは、各ご家庭からゴミとして出す場合は一般ゴミとして、市指定の袋に入れて出せるのですが、私たちのような法人や会社などが出す場合は「産業廃棄物」扱いになり、簡単にゴミで出せない、という点があります。そうなると、週に2回~3回、処理センターに運ぶ事になる。それまでの保管はどうするの?という問題も出てきます。そうすると、「手ぶらで登園」はできても「手ぶらで降園」はできない事になります。そうすると、そんなに保護者負担の軽減に寄与するとは思えないのかな?とも思ってしまいます。

結局、「他園との差別化」って「しっかり子ども一人一人を見る保育」「子どもの事を考え、作られているカリキュラム」「優しい先生」という保育の基本を忠実に行う事じゃないかな?って思ってしまいます。旭幼稚園は、この基本を大切に、「数」ではない「内容」の充実した保育をやり続けていくつもりです。それが一番の「差別化」になると思っています。