過日、某シンクタンクの開催する研修会に参加しました。幼稚園の研修は、先生向けの「手遊び講習」「絵本読み聞かせのコツ」といったハウツーものから「幼児の発達」「子ども一人ひとりに寄り添う保育」といった保育の内容に切り込んでいくものまで、種々様々。本当に「行きたい講習・聞いてみたい講座」があふれています。ところが、園長向けと言うと…。

 連合会でも園長設置者研修というものはあります。内容としては県からの「今年から制度が変わります」といった伝達。「今年の監査で目についたもの」等々の注意事項。いわゆる経営面の講習がほとんどです。たしかに園のマネジメントができていなければ運営もままなりません。「教育」と「経営」は幼稚園の両輪で、どちらか一方だけでは車は前に進みません。
でも「こんな研修、聞きたいなあ」と思うものが少ないのが現状です。

 それだけに、今回の研修会、バラエテイーに富んだ講師陣で、ちょっと興味があったので行ってきました。内容は今回は幼児をとりまく環境の変化という基調講演に続き、高校野球の監督さん、教育評論家(実践家)の方です。

 最初の幼児をとりまく環境の変化については、少子化が加速度的に進む、という現実を改めて突き付けられた感じがします。全国データーと栃木県、足利市のデーターを比べてみると、やはり足利市の人口動向は全国平均より厳しいように思います。0歳児はボチボチなのですが、1歳児からの就園率が高くなる(育休明けから預けて職場復帰)という方が増えた事が就園率からも推測できます。

私が幼稚園に戻って来た45年前。女性の就労率は、20代後半がピークで、それを過ぎると、極端に就労率が下がり、30代半ばからまた上昇する「M字型曲線」でした。欧米の場合は、このガクンと下がる所がない「台形型曲線」であった。わが国もこうなるべきだ、という議論があったものですが、今や日本もそうなってきました。すると「預け先」が問題になる訳です。
保育所不足が叫ばれ、保育制度も大きく変わりました。認定こども園の登場も、こんな社会背景がベースになっています。
こんな説明と、今後の対策。(結果的には子どもに優しく、保護者にとっても「良い幼稚園」になるように努力しましょう、という事になるのですが)こんな講演を聞きました。

 次にゲスト講師は、高校野球の監督さん。甲子園にも出場経験がある高校です。内容の掲載許可をもらっていないので、お名前は伏せさせていただきますが、高校名を言っただけで「ああ、あの人ね」ってわかる方も多いと思います。

 講師の先生も、自分自身生徒の時はレギュラーでもなく、たまたま縁あって母校の監督をやる事になった、と言うお話からスタートしました。最初は中学の野球部監督からスタートしたのですが、集まった生徒は野球経験者皆無。打席に立ってヒットを打ったら3類方向に走る者までいた、という笑い話から始まり、部員のモチベーションを上げるための方法を、自分で模索しながら考えたそうです。
上からの伝達では今はダメ。「お前ら、わかったか」と言えば「ハイ」と反射的に答える。それを「解かった」と思うと違う。練習方法まで含め、本人が納得しないと効果は出ないよ、というお話でした。

最後の方に「負けた試合のビデオを見て研究した」という発言がありました。勝った試合でなく、負けた試合を見る?。質問コーナーで「負けた試合、何か共通点はありますか?」と聞いたら「ほぼ自滅で負けている」との事でした。私たちにも言える事、思い当たる事です。そう言われてみたら、「本当に出来ているのだろうか」「理解しているのだろうか」という「確認」を怠り、「動けているのだから大丈夫」という「思い込み」で自滅した事、何度かあるな、と気づいた次第です。

 講演終了後のレセプションで本当に聞きたかった事を聞きました。高校野球って部活動ではあるけれど、教育活動である訳です。野球と言うスポーツを通じて、人間いかに生きるべきかを学ぶ場であるはず。野球は目的ではなく手段であるのでは?という質問です。
 監督は「おっしゃる通り、野球は手段である。だけど、教育的な目的だけでなく、勝つという事も重要な経験。だから一方だけでなく、2つのベクトルを同時に追い求める事もできると思う」というお話でした。勝負の世界に生きてこられた方だからこそたどり着いた境地なのだろうな、と思いました。
よい研修会に参加できたと思っています。私も「自滅」しないよう頑張ります!