認定こども園という制度が法制化して少し落ち着きを見せてきました。私ども旭幼稚園が認定こども園になったのが平成28年。1年間だけ旧園舎で「幼稚園型認定こども園」として運営しつつ、新園舎を建設。平成29年度から現在の地で幼保連携型認定こども園として運営しています。


 皆さんもご存じのように、認定子ども園とは、幼稚園と保育所の機能を合体した施設です。全ての子どもに教育と福祉を、という崇高な理念から、幼稚園・保育所と言う「かきね」を取り払い、幼稚園でもない保育所でもない、認定こども園と言う新しい制度に基づいた施設として運営する「はず」でした。ところが

 今でも「幼稚園の園児さんだけを抽出して報告して下さい」「保育所の園児さんだけ補助します」という制度の趣旨からしたら、奇怪とも思える報告書の依頼が来ます。だから幼稚園時代と比べると「幼稚園に関する文部科学省の書類」、「保育所に関する厚生労働省の書類」「認定こども園に関する内閣府からの書類」が求められ、事務量が3倍になっています。そのうえ、わが園は学童クラブに関する書類、企業主導型保育施設に関する書類」も加わりますので、煩雑さが人一倍。やっとひとつ書類を作ったと思ったら、ポストに次の報告書依頼が入っている。そんな状態です。「なんとかならんのか!」と思う事も多いです。
 平成29年4月は、「4月になったら報告してください」という書類を含め、28通の報告書を出さないといけない。つまり、1日1通の報告書を作っても足りない状態でした。初年度という事もあるのでしょうが、まさに殺人的な忙しさ。県や市から送られた封筒を開けるのが怖かった事がありました。

 この原因は簡単です。国は幼稚園も保育所も、全て認定こども園に統一する「つもり」で制度設計をしましたが、「やはり幼稚園がいい」「保育所で運営したい」という園の希望を取り入れ、既存の幼稚園・保育所制度を残してしまいました。だから一元化する予定が3元化してしまったのです。

 このような不合理とも思える補助も、幼稚園・保育所も残存している以上、そこに対して行っていた補助を打ち切る訳にはいかない、という事情があるものと思います。特に保育所は福祉施設ですので、幼稚園に比べると数段手厚い補助に恵まれています。これも「県独自の補助」「市町村独自の補助」などがありますので、もしこれらすべてを廃止したら困る保育所が出てしまう。それを防ぐため、とも聞いております。

 幼稚園の皆さんは、認定こども園に移行すればバラ色の未来が待っているような錯覚を起こしたのでは?と思う所があります。一時期は、幼稚園連合会の研修、認定こども園への移行に関するものばかり、という年もありました。だけど、全ての幼稚園が認定こども園に移行したら、条件は全く同じになります。そうなると最後に決め手となるのは「園の内容」「園の教育方針」ではないか。つまり、最初に戻ってしまうような気がしてなりません。

 私ども旭幼稚園は、この部分だけはしっかりと伝えていきたいと思っています。その意味で小規模であったとしても、自分たちの理想とする保育ができる環境を整えていきたいと思っています。