今回は「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」について思う所を述べさせていただきます。

 教育・保育要領に限らず、この種のものは非常に抽象的です。具体的な活動名など、あまり書かれていません。それは各幼稚園・認定こども園の置かれている環境が違います。ある園の園長先生のお話ですと、転園してきた子どもが「なんでここの園は鮭のつかみ取りができないの?」と聞いてきたそうです。聞けば北海道の園から転園してきた子どもで、園の隣に川が流れていて、本当に鮭が遡上するのだそうです。そんな園もあれば、都会のビルのような幼稚園で、園庭もアスファルト舗装。屋上で大きなポリバケツに根を張った木を栽培している所もあります。そんな訳ですから、全国で使われる要領に、具体的な活動を記載するのは無理があるからだと思っています。

 ですが、どんな幼稚園であっても、子どもが環境とかかわり、自分の好奇心や興味関心を基に作ったり友達と協力したりと、「遊びという名の『活動学習』の中で体験し、工夫し、学んでいく」という活動の「目的」は同じです。そこで、認定こども園教育・保育要領では「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」が記載してあります。以下のようになります。

1,健康な心と体(自ら健康で安全な生活を作り出していけるような「体験」)
2,自立心(自分の力で思いをめぐらして、あきらめないでやり通す事)
3,協同性(友達と考えを共有し、協力して活動を進めていくこと)
4,道徳性・社会性の芽生え(相手の立場になって考える事、ルールを理解し守る心の育ち)
5,社会生活とのかかわり(社会との「つながり」の意識などが芽生えるような体験)
6,思考力の芽生え(物事や現象を予想したり、考えたりする態度)
7,自然とのかかわり・生命尊重(自然に触れて感動時、命あるものを大切にする心)
8,数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚(「遊び」という「活動学習」の中で、数や文字などに触れ、感心・感覚が高まるような体験)
9,言葉による伝え合い(絵本などに親しんだり、言葉で伝えあったりする)
10,豊かな感性と表現(感じた事を自分で表現する事を楽しみ、意欲が高まる)

ざっと以上のようになります。この10の姿も「できる・できない」という判断ではなく「気づく・気づかない」から「知っているけれど、不思議とは思わない。なぜそうなるのかが不思議と思う」等々、子どもによって感じ方・とらえ方が違います。気づかないから劣っているのではないのです。その一人一人の「気づき」をクラスで、園で共有していく事が集団による教育だと思っています。

 よく読んでみると、これも抽象的な表現なのですが、園内の庭や砂場や遊具などで遊んでいる姿。その遊びの中で友達と交わしている会話などを思い出しながら読み返すと「ははあ、こう言う事ね」って何となくわかってくるような気がします。

次回はこの10の姿を、どうやって具体的な活動にしているか、をお話したいと思います。