(道徳性・規範意識の芽生え)

 

幼稚園教育要領によれば、友達と様々な体験を重ねる中で、してよいことや悪い事がわかり、自分の行動をふりかえったり、友達の気持ちに共感したりし、相手の立場に立って行動するようになる。また、きまりを守る必要性が分かり、自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、きまりを作ったり、守ったりするようになる」と記載されています。領域で言えば「人間関係」がこれにあたります。

 

前回の「協調性」の所で「協調性とは人とかかわる力」ととらえた、と説明させていただきましたが、この「道徳性・規範意識の芽生え」にも重複する部分となります。

 

ずいぶん前ですが、県内の幼稚園から大学までの先生方で組織する連合教育会という団体が「下野教育」という会報を出しています。足利の幼稚園で、このテーマについて2000字で原稿を、という話になり、私が指名されちゃいました。ちょうど小学校でも「生活科」という単元ができて、小学校の先生方もどう授業を進めて良いかわからない、という話を聞いていた時だったので、私の園での実例をあげて原稿を書きました。要約すると

 

ある年度、元気のいい男の子が多いクラスで何でも競争になっちゃう。「オレ、一番!」になりたくて、何でも先に飛び出さないと気が済まない。落ち着いた活動ができない、と相談を受けたので「時間がかかってもいいから、自分たちで気づくまで見守っていこう」という事になりました。でも、大変だったようです。

「制作をしますから、お道具箱をロッカーから…」ここまで言ったら、その後を聞かずロッカーめがけて突進する子が多数いて、ぶつかった・肘があたった、転んだとトラブルの連続。でも、そのうちに「どうせ今行っても混んでいるから、人がいなくなってから取りに行く」という子どもが出ました。それが何回か続いた後、「順番で行けばスムーズになるよね」という意見が子どもの中から出てきた。そこで話し合いを行い、グループに分かれて、順番にすればいい、というルールを作る事になりました。その後は大きなトラブルが出なくなっただけでなく、規則を守ろうと言う機運が高まり、お互いに相手の事を考え、行動するようになった、という例を紹介しました。(下野教育の記事の反響はどうだったか、耳に入って来ないので、全くわかりませんが…。)

 

この例が一番よい解説になっているかと思います。子ども達はトラブルを受入れ、それを改善するために知恵を出し合う。そして自分たちが決めたルールだから守ろうと努力する。相手を思いやる。そんな体験を通じ、社会に出た時に周りを見て、最善の行動がとれるようになると思っています。旭幼稚園の目標のひとつ「自分で考え・判断し・行動できる子ども」もこう言う意味を持っているのです。

 実は私、不詳井上は弁護士を目指し、法学部と言う所に籍をおきました。その時の最初の授業で「法律は絶対ではない。法律を守るという事は、警察につかまらないと言うだけで、法律以前の問題として『やさしさ』『思いやり』『条理』といったものがあり、それが社会を支えています。『法律を守る』と豪語している方は、警察のお世話にならない・刑務所に入ることはない、というだけで、人間としては最低だ、という事です。皆さんもこの事をわきまえた上で勉強して下さい」って言われました。
規則ってひと口に言いますけど、本当は奥が深いんですねえ。